2010年4月25日日曜日

ALS と命と医療について考える

ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis、筋萎縮性側索硬化症) に関連する翻訳をすることになり、何か本を読まねばと選んだのが、立岩 真也「ALS 不動の身体と息する機械」。

幸運にも今まで病院のお世話になることも少なかった私は、医療関係の本を読んだことがほとんどない。立岩さんの本は、2004 年に出版されてからずっと、 ALS に関する良書として読まれてきたらしい。

ALS は、次第に運動神経が冒されて筋肉が弱っていき、話すことも、自分で呼吸することもできなくなって、余命が 2、3  年しかとないと言われる深刻な病気(本書を読むと、6 年以上前の時点でもこの余命は延ばすことが可能だと分かる)。

社会学者の立岩さんは、本書で病気の生命や治療方法について記述するよりも、個々の患者、そしてそれを見守る家族や介護者、医師のリアルな反応や心境を書き表している。

私が一番関心を持ったのは、立岩さんが一番ページを割いて書いている「人が生きることを社会が肯定する」「中立であることとは」という点だった。

体が動かなくなり、何もなすこともできず、何も伝えることもできなくなったら、生きる資格がないように思わせてしまう社会。そのために、この病気にかかった患者は、生きる術があっても、将来の自分を思い浮かべると、自分は生きる価値がないと考えて生きる道を閉ざしてしまう。

それは病だけでない。
この社会では「きちんと就職していないと」「結婚していないと」「結婚しているんだったら、子どもがいないと」「いい大学に入らないと」と目に見えない形で次々と人の心を脅迫し、それを満たしていないと生きる価値がない存在のように思い込ませてしまう。

ALS は今でも完治する病気ではないが、人口呼吸器をつけることで生きる時間を長くすることはできるが、人によっては、「家族に迷惑をかけたくない」、「経済的に余裕がない」と、生きることを諦めてしまう人がいる。

でも、実際には延命するための手段はあり、医療費免除のシステムもある。
それなのに人が生きることをやめてしまうのは、「社会の通念が人を生きにくくしているのではないか」というのが立岩さんの鋭い指摘である。

中立についても鋭い私見を述べている。
命について重大な決断をしなければならない時に、「本人が決めることだ」と中立な立場を取りながら、じつは人の命に対する責任逃れをしているという現実。

これも ALS だけに限ったことではない。誰かが重大な決断や行為をする時に、自分はその責任を取りたくないから、途端に口を閉ざしてしまう。

P143

私たちの社会では一方で、身近な、とくに善意もなにも必要とせず、
むしろそれがうっとおしく感じられるような場面で、
やさしさやふれあいが語られる。
善意が押しつけがましく押しつけられ、それは問題にならない。

他方で、生死に関わるような場面になると、
本人の意志を尊重して云々と言う。
周囲は口を出さないようにしようと言う。
これは逆さではないか。」
こうした時こそ、その人が生きることを周囲が肯定してあげる必要があり、そうでないと、ほとんどの人が生きにくくなってしまうと立岩さんは書いている。

人々が生きて行きたいという強い意志、それを見守る人々の葛藤と深い愛情、生きたいのに生きることを選択できない遣る瀬ない人生など、様々なストーリーに溢れ、まだ他にも紹介したい箇所はたくさんあり、とても私の拙い文章ではそのほとばしる激情の一端も表わすことができない。

本書では、「生きること」「生きないことを選ぶ選択」について、時として哲学書のような、深い考察が重ねられて、理解するのが難しくなる部分もある。それでも、ALS という病気を切り口に、「なぜ人は生きるのか」という問いについて改めて考えることになる。

社会…それは自分とは別の「何か漠然と大きなもの」ではなく、個々の人々の心の裏にある世界なのではないか。

難病を切り口とした本書は、人が生きることの本質、人が生きていく上での社会との関わりについて再考するきっかけを与えてくれる良書である。

2010年4月23日金曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 22 日(木)

人間、差し迫らないと物事を始められないものである。
Web サイト制作の案件も、たいていそんなケース。

皆、Web を持つ必要性は感じているけれど、技術や予算的な面で敷居が高くてなかなか始められず、「もうどうしても今すぐないと困る」という時点になって、やっと重たい腰を上げることになるのだ。

サイト制作の相談をもちかけられた知人のケースはそこまでひどくないけれど、最低限のページで来月上旬にはサイトをオープンしたいらしい。提案書にちょっとしたアドバイスをまとめてメールする。

今回は、実際に制作をお願いする業者も決まっていて、イラストも専門で書いてくれる人がいるし、知人は編集者で記事作りには慣れているし、心強い方々がたくさんついている。

でも、そうなると私は何をするんだろう・・・?
知人は電脳音痴らしいので、まずは相談役に徹します。 

2010年4月19日月曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 19 日(月)

「私も、じつは相談したかったんです…」

と、次々と告白があるとドキドキしてしまうものである。
って、Web サイトのお話です。

でも、目をキラキラを輝かせている人々(とメールの文面からは想像)の話を聞いているうちに、私の方もワクワクして、一緒に何かしたくなるのです。

2010年4月16日金曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 15 日(木)

CSS Nite で中川直樹さんのレクチャーを聴いて、刺激を受けた夜。

セミナー会場の銀座から、友達と待ち合わせをした新宿へ丸ノ内線で移動する間に、今度作成するホームページの Flash のアイディアが思いつく。

自分で言うのもなんだが、シンプルな動きながら、現代らしいデザインでサイトの主催者の活動もさりげなく表現している、なかなか粋なアイディアだ。

ここでいつも浮かんでくる問題は、
さて、いったいこれをどうやって作ればいいだろう。

2010年4月11日日曜日

[プロボノ日記] TED の初翻訳を終了

初めての TED での翻訳をめでたく完了。

TED の翻訳も初めて、動画の翻訳も初めて、レビュアーが翻訳を確認してくれるのも初めて…
と、まさに初めて尽くし。

そもそも動画の翻訳で、

 「、」の代わりに半角スペース
 「。」の代わりに全角スペース

を使うなんてルールすら知らなかった。

改めて、字幕ってどうなっていただろう、と映画館で気になる始末。

翻訳し、できあがった訳文を動画の字幕に当て込んで確認しながら作業を進めるのだが、
几帳面に一語一語翻訳すると、字幕としてはとても冗長になってしまう。
これでは字幕が切り替わるまでに読み切れない。

今回の翻訳では、医療の専門用語が多かったのだが、それは辞書で調べればたいてい済む範囲。

翻訳していて悩まされるのは、むしろ中学校で習うような基本的な単語。
今回だと、たとえば「 gift 」や「 story 」といったことばをどう置き換えるか随分悩んだ。
何度も繰り返し見ている内に、果たして初見の人が理解できるのか不安になってくる。

翻訳を終えた後、私のレビューを担当してくれたのは、
お仕事で技術系の翻訳をしているプロの翻訳家。

レビュアー担当者が私の拙い文章を確認してくれて、
さんざん悩んだ「 gift 」は「はなむけ」に、
story 」はひねりを加えずシンプルに「物語」としてくれて、
全体的にも読みやすい文章に直してくださった。

まだまだ自分の語学力が甘いなあ、と再認識。
これにめげず、また TED で翻訳ボランティアをしてみたいと、気持ちを新たにして、
次のスピーチを探し始めた。

[追記]
翻訳が Web にアップされました。
Jamie Heywood :弟が命を吹き込んだ大計画

2010年4月10日土曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 10 日(土)

今日は昼は飯田橋にでかけて、その後の作業をどうするか先方の連絡待ち。昼前に連絡が取れて、今日はそれぞれ作業日にあてることにする。

今日読んだ「自分の仕事をつくる 」には、村上春樹が 30 歳を越えたころから、執筆作業を続けられる体力・精神力を保つために、マラソンを始めたという。20、30 代でなんとかやってきたことが、40、50 代では同じようにはできなくなっていく。

さあ、自分はどうしていくか。

2010年4月9日金曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 9 日(金)

追加の写真素材が到着。画像は時間があればあるほどレタッチに時間をかけてしまって危険。

いまいち、これぞという写真がなく、うなる。何でも撮影すればいいというものではない。いい写真、心を込めて撮った写真はそれ一枚で映えるもの。

やはり夜、日にちが変わる頃からプロボノ業務を始めるのは体力的にも無理がある。夜ズルズル起きるより、朝方に切り替えてみようか。

2010年4月8日木曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 8 日(木)

普通の Web 制作も、ベンダー側、担当者側がリードしなくてはプロジェクトが進まないけれど、NPO 業界と仕事をする際にはさらに注意が必要。

もともとリソースがないところを力技で進めている団体が多いので、締め切りから遡ってスケジュールをひく、各マイルストーンに応じた成果物を出して行く、という基本的なプロジェクト管理がないケースがほとんど。

実際のビジネスシーンもそうだけど、Web について高度な技能は必要なく、プロボノで必要なのはむしろプロジェクト管理や個々のタイムマネジメント能力。

2010年4月7日水曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 7 日(水)

今日は昨日の反動で、仕事の合間もない状態。

10 時まで全速力で仕事をし、家に返ってから Web リニューアルを手がけよう。

と家に帰るとどうしてもブログが、文章が書きたくなる。
いいや、それを書いてから始めよう。

※その後、軽くワインを飲んだらもう就寝。

2010年4月6日火曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 6 日(火)

今日は夜にサイトの打ち合わせがあるため、なんとかそれまでに主なページの制作を終えているはず。。。であった。しかし昨夜寝てしまったために準備は整っていない。

あまりやりたくはなかったが、仕事の合間に気分転換をかねてコーディング。またかなり進む。

職場を 8 時半過ぎに出て、9 時から表参道で打ち合わせ。
NPO の勉強会があったらしく、その方々の飲み会に便乗する形に急遽変更。それでも飲み屋の片隅でノート PC を囲んで打ち合わせ。9 時から飲み屋でするミーティングって初めて。。。

その後の飲み会では、何年かぶりにあったNPO業界の方々もいて、なんだか楽しかったー。

さすがこの業界の人はみんなプロボノを知っているし、サービスグラントのことも知っていた。

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 5 日(月)

早めに仕事を終えて、今日もバリバリ制作のはずが。。。昨日のリバウンドでしっかり寝てしまう。

2010年4月5日月曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 4 日(日)

やっとこさページの作成にとりかかる(しかも夜も更けた頃から)。

今回は一週間という限られた時間でコンテンツを作成しなくてはいけないので、ナビゲーションやサイトのデザイン変更はなし。ともかくコンテンツ作成。

作成元が DreamWeaver で作成しているので、久しぶりに Dream Weaver を立ち上げる。懐かしさに感激していて、夜遅くからエンジンがかかって、コーディングを進める。結構これなら行けそう。

最近はすっかり仕事で CMS を使うのに慣れてしまっていたので、改めてそのありがたみを実感。

Skype やネットを使えば、結構どこからでもこの仕事はできるものだと一人納得。

2010年4月4日日曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 3 日(土)

よし始めるぞ、と思いきや、まずは環境づくりから。
時々家の前の桜並木に目をやりつつ、机の周りを片付ける。
そして、案の定整理整頓をしているうちに夜が来る。

夜、先方の担当者と Skype で打ち合わせ。
普段、仕事で電話会議があるので慣れている方だけど、細かいところのツメは現物を見た方が早い。

先々週の打ち合わせの結果が曖昧になっていて、議事メモを作るべきだったとちょっと反省。今度からの課題。

「いいや、これも想定内さ。明日がんばろう」

と思っていると、夜中に次々と原稿や素材が送られてくる。。。

2010年4月2日金曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 2 日(金)

今回手がけているのは、知人の任意団体のサイトリニューアル。

4 月から財団法人となるにあたって、掲載内容を更新する必要があるのだ。
といっても、私がお手伝いすることに決まったのは 1 ヶ月前、更新作業のための最初の原稿をもらったのがリニューアル公開の 1 週間前とかなりタイトなスケジュール。

あまりもリソースも時間もないので、今回は大枠のデザインは変えず、掲載内容の更新や追加が中心。

完全なボランティアではないので、プロボノとは言えないけれど、プレ・プロボノということで、今後の下準備や勉強のためにもとりかかる。

明日入っていた打ち合わせが先方の都合で延期になり、正直ほっとする。
まだ何もまともに作っていない。少しリラックス、でも会社の仕事が終わらない。

2010年4月1日木曜日

[プロボノ日記] 2010 年 4 月 1 日(木)

プロボノのことをブログで書こう。。。

でも既存のブログはイギリスねたをメインでまとめておきたいので、別にブログを立ち上げることにする。

読者は、書店で自分の興味のあるトピックの本を手にする。
そして、お客様によってランディングページを変えるのは Web マーケティングの極意。

というわけで、本日開設。